マーケティングのトレンド、今後はどうなる? イママデから読み解くコレカラ

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その時々の世情を反映して、常に進化していくマーケティング。インターネットの登場とSNSの普及で劇的に進化したことは記憶に新しいところですが、今後はどのようになっていくのでしょう?

アメリカの経営学者フィリップ・コトラーは、インターネットの時代をマーケティング3.0と定義し、現在はすでにマーケティング4.0に入っていると提唱しています。マーケティング4.0とは何か?

そもそも1.0、2.0と3.0って? 過去を振り返りながら、進化し続けるマーケティングのトレンドを考えていきましょう。

マーケティングはアメリカから始まった

握手をする男性2人

マーケティングという言葉と概念は、19世紀にアメリカで生まれたと言われています。イギリスで起きた産業革命(18世紀後半)の影響を受け、大量生産されるさまざまな製品を効率的に販売する仕組みが求められたのです。

マサチューセッツ工科大学(M.I.T.)で経済学の博士号を取得し、87歳になった現在でもノースウェスタン大学 ケロッグ経営大学院で教鞭を執るフィリップ・コトラーは、進化するマーケティングを4つに分類しました。

  • マーケティング1.0(1900〜1960年代) 生産主導のマーケティング
  • マーケティング2.0(1970〜1980年代) 顧客中心のマーケティング
  • マーケティング3.0(1990〜2000年代) 人間中心のマーケティング
  • マーケティング4.0(2010年以降) 自己実現のマーケティング

出展:「コトラーのマーケティング4.0 スマートフォン時代の究極法則」 フィリップ・コトラー他 著、恩藏 直人 訳

マーケティング1.0 生産主導のマーケティング

1900年から1960年代は、イギリスの産業革命で蒸気機関が実用化され、やがて電力が大量生産を牽引する第二次産業革命が起きた時代です。大量に物を作り、販売すればどんどん消費される市場。顧客が何を欲しいかではなく、企業は企業の視点で物を作りました。
この時代を象徴し、よく引用される言葉にフォード・モーター社の創業者、ヘンリーフォードの言葉があります。

T型フォード

「People can have the Model T in any color – so long as it’s black.」
(T型フォードを買う人々は、どの色でも好きに選べる ー それが黒である限りはね。)

T型フォードは発売当初3色のバリエーションを販売していましたが、後年生産性を上げるため、一番乾きやすい黒に塗装を統一しました。顧客の好みなど、まったく無視したヘンリーフォードの言葉。まさに生産主導のマーケティングだったのです。

マーケティング2.0 顧客中心のマーケティング

手を合わせるビジネスマン

大量生産、大量消費の時代が終わり、1970年代にはオイルショックによるインフレが経済を直撃します。もはや企業目線では物の売れない時代となり、マーケティングはその視点を企業から顧客へと移します。
顧客のニーズやウォンツを探るためにSTP分析や5F分析が用いられるようになり、獲得した顧客と長く付き合っていくことを目的とした、リレーションシップマーケティングなどが提唱されるようになりました。顧客のニーズを把握できない企業は、生き残れない時代になったのです。

マーケティング3.0 人間中心のマーケティング

20世紀の後半は、顧客中心のマーケティングが進化し人間中心のマーケティングとなっていきます。マーケティング3.0を「価値主導のマーケティング」とか、「ソーシャル・マーケティング志向」と呼ぶ人もいます。

1995年には「Windows95」が発売され、本格的なインターネット時代を迎えました。インターネットは人と情報を劇的に結びつけ、SNSは人と人、人と企業の関係をさらに密接なものへと昇華させました。企業が自らの利益だけを考える時代は終わり、社会にどのような価値を提供するかが重視される時代となったのです。

その一例としては「ISO14000シリーズの認証取得」が挙げられるでしょう。ISO14000シリーズは、企業が地球環境に配慮して事業活動をするために策定された国際規格です。企業自らが環境への負荷を減らす目標を立て、その取り組みを認定機関に評価してもらい認証を取得します。現在では上場企業の80%以上、非上場企業でも50%弱が取得しています(※)。 今後、地球環境に配慮できない企業は生き残れないという危機感からか、取得企業の数は年々増えています。

そしてフィリップ・コトラーは2014年、自己実現のマーケティングとしてマーケティング4.0を提唱しました。

(※)出展:環境省「環境にやさしい企業行動調査結果」

マーケティング4.0 自己実現のマーケティング

マズローの自己実現理論(欲求の五段階)

マズローの自己実現理論(欲求の五段階)

心理学者のアブラハム・マズローが提唱した「自己実現理論」を元に、フィリップ・コトラーはマーケティング4.0を自己実現のマーケティングと定義しました。

自己実現理論のピラミッドは、生きていくための「生理的欲求」、安心して暮らすための「安全欲求」、社会に属し、人と関わりたいと考える「社会的欲求」、人に認められたいという「承認欲求」、あるべき自分でいたいという「自己実現欲求」の五段階で構成されています。

マーケティングにおける自己実現とは、顧客が持つ「自分らしく生きたい」という欲求を満たすための企業活動ということになるでしょう。では具体的に顧客に「自分らしく生きること」を提供するマーケティングとはどのようなものなのでしょうか?

マーケティング1.0から3.0への変化は、【大衆】から【個】への変化とも言えるでしょう。マスマーケティングから劇的にパーソナライゼーションが進みワントゥワンマーケティングに、さらに企業から情報を与えられるのではなく、顧客自身が情報を選択するコンテンツマーケティングまで、社会状況の変化に合わせてマーケティングは進化してきました。そしてこれからの主流となるマーケティングのキーワードは、「ダイバーシティ」だと言われています。

手を合わせるビジネスマン

ダイバーシティを価値として捕らえたマーケティングとは、人それぞれの多様性(Diversity)を認め、一人ひとりの自己実現を支援するような商品・サービスを提供していくこと、といえます。

すでに電通ダイバーシティ・ラボでは、「マス」「one to one」の先にあるのは「インクルーシブ・マーケティング(※) 」だと定義し、多様な人材を積極的に活用する企業活動を始めています。
インクルーシブとは「包括的な」という意味で、逆に言えばエクスクルーシブ(exclusive:排他的)ではないマーケティングを意味しています。誰も差別することなく、人と人とを結びつけるマーケティング。これはあくまで概念であり、この概念から今後さまざまなマーケティング手法が生まれてくることでしょう。

(※)出展:社会と企業のこれからを描く「インクルーシブマーケティング®」

インクルーシブ・マーケティングは電通の登録商標です。

まとめ

企業の生産都合による、一方的な押しつけマーケティングだった1.0。自らが危なくなった(物が売れなくなった)ことにより、あわてて顧客目線に立場を変えた2.0。インターネットの普及と共に主導権は顧客に移り、自己中心的な企業は生き残れなくなった3.0。この3.0の時代は、「コト消費、モノ消費」という言葉が象徴するように、価値に注目が集まった「価値主導のマーケティング」時代でもありました。

そしてマーケティング4.0。差別を排し多様性を認め、「自分らしく生きること」を応援するマーケティングの時代です。このようなマーケティングを行い価値を顧客に提供していくためには、まず企業自らがダイバーシティを受け入れ変わっていかねばなりません。

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