用語解説【SWOT分析】
SWOT分析とは、自社の商品やブランド力、さらには品質や価格といった内部環境と、競合や市場トレンドといった外部環境を「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4つの要素に分類し、最適な事業戦略を検討するためのフレームワーク。
環境の変化に対応するために重点的に投資すべき要素を絞り込めるため、経営戦略やマーケティング計画策定の際に有効な分析手段の一つとされる。
SWOT分析とは?
ハーバードビジネススクールにて1920年代から考案されていた企業分析の手法をもとに、1960年代にスタンフォード大学研究所のアルバート・ハンフリー博士が「SWOT分析」として構築したものです。
企業の経営戦略はもちろん、マーケティングの戦略策定においても極めて有効に活用できる手法とされています。
SWOT分析における4つのカテゴリ
SWOTとは、「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4つの言葉の頭文字を並べたものです。
SWOT分析は、事業の目標達成に影響を与える要因を、
- 内部環境における要因と外部環境における要因
- ポジティブ要因とネガティブ要因
という2つの軸で4つに分類して分析するフレームワークです。
「内部環境」とは、商品やブランド、人材リソースなど、企業(組織)が自社でコントロール可能な独自資源のことです。一方、「外部環境」とは、政治、経済、市場動向、消費者ニーズなど、自社のコントロール外にある要因のことを言います。
「ポジティブ要因」とは目標達成に貢献する要因、「ネガティブ要因」とは、目標達成の障害となる要因です。
SWOT分析ではこの2軸によって、事業に影響を与える要因を以下の4つのカテゴリに分類します。
強み(Strength)
企業の内部環境において、目標達成に貢献すると考えられる特質。
弱み(Weakness)
企業の内部環境において、目標達成の障害となると考えられる特質。
機会(Opportunity)
外部環境において、目標達成に貢献すると考えられる特質。
脅威(Threat)
外部環境において、目標達成の障害となると考えられる特質。
SWOT分析を行うメリット、デメリット
SWOT分析はあくまでも分析手法の一つであり、これだけですべての答えが得られるような万能なものではないことを理解しておく必要があります。SWOT分析を行うことで期待できるメリットと、SWOT分析の限界について理解しておきましょう。
SWOT分析のメリット
事業の戦略を検討する際、強みや機会といったポジティブな要素に注目しやすく、弱みや脅威に対する意識が抜け落ちたり、軽く捉えたりすることもあるものです。SWOT分析では、ネガティブな要素も同時に検討することになるため、弱みを補い脅威を回避しながら、強みや機会を活かすという戦略を客観性を持って打ち出すことができます。
何事も客観性は重要だよね。
また、内部環境と外部環境の双方に目を向けることで、広い視野で現状を捉え、最適化した戦略の策定ができることもメリットです。
自社の現状を客観的に把握できるようにすることは、経営戦略やマーケティング戦略を合理化するだけでなく、社員の意識やモチベーション向上にもつながるでしょう。
SWOT分析のデメリット
SWOT分析の「2つの軸によって分けられる4つの要素」というのは、とても明快でわかりやすいため、現状を整理しただけで満足してしまうというケースが多く見られます。しかし、本来は分類した後に分析し、戦略策定のアイデアにつなげていく必要があるものです。
また、環境要因というのは、単純に「強み・弱み」「機会・脅威」と分類できるものばかりではありません。同じ事柄が、ある目的に対しては強みであり、別の目的に対しては弱みとなるといったこともあるものです。あくまでも目的を明確にして、その目的に対する分析として行わなければ意味がないということを理解すべきでしょう。
SWOT分析の進め方
実際にSWOT分析を行うときは、以下のような流れで進めていくのが一般的です。
STEP①:外部環境の分析
自社の内部環境である「強み」「弱み」は、外部環境の変化によって変わってきます。このため、SWOT分析では、最初に外部環境(機会・脅威)の分析から始めるのがセオリーとなっています。先ほどもお伝えしたとおり、外部環境とは、政治、経済、市場動向、消費者ニーズなど、自社のコントロール外にある要因のことです。
自社に関わる市場や消費者ニーズの傾向や変化に注目し、目標達成に影響すると思われる要因を機会と脅威に分けてリストアップしましょう。
外部環境分析では、5F分析やPEST分析、PLCおよびイノベータ理論などのフレームワークを併用することも多いですね。
STEP②:内部環境の分析
外部環境分析で「機会」と「脅威」をリストアップしたら、それらの外部環境が自社に与える影響を検討しつつ、自社の「強み」と「弱み」を洗い出します。内部環境についての評価は主観的になりやすいので、必ず競合との比較やデータなどの根拠を持って、客観的に強みと弱みを判断するようにしてください。
STEP③:クロスSWOT分析
フレームワークに従って、「強み」「弱み」「機会」「脅威」の4つの要素が整理できたら、これらの情報を掛け合わせて分析を行います。この工程を「クロスSWOT分析」と言います。
クロスSWOT分析では、以下のように2×2で合計4つの組み合わせによる分析を行います。
- 強み×機会:強みを生かして機会を勝ち取るための施策は?
- 強み×脅威:強みを生かして脅威に対処するための差別化は?
- 弱み×機会:弱みを補い機会を生かすための施策は?
- 弱み×脅威:弱みが脅威にさらされることを回避するための防衛策は?
4つの問いに対する答えを検討することで、企業が選ぶべき最適な戦略が見えてくるはずです。
SWOT分析の具体例
前項でご紹介したSWOT分析のやり方に従って、とあるWebコンテンツ制作会社の戦略を例として見ていきましょう。
ポジティブ要因 | ネガティブ要因 | |
---|---|---|
内部環境 | 強み(S)
| 弱み(W)
|
外部環境 | 機会(O)
| 脅威(T)
|
事業の成功に影響するポジティブ要因とネガティブ要因を内部環境と外部環境それぞれに対してリストアップすることで、自社の「強み」と「弱み」、「機会(チャンス)」と「脅威(リスク)」が整理されます。
この情報を元に、クロス分析で自社の成功要因を検討すると、以下のような施策が導き出されます。
- 強み×機会
- 強み×脅威
- 弱み×機会
- 弱み×脅威
強みを生かして機会を勝ち取るための施策は?→専門家監修コンテンツのサービスを構築する
強みを生かして脅威に対処するための差別化は?→社内ライターを活かし、クライアントの要望を最大限に汲み取ることで、クラウドソーシングでは実現しづらい満足度の高い成果物を提供する
弱みを補い機会を生かすための施策は?→「質」を重視したコンテンツ制作に取り組む
弱みが脅威にさらされることを回避するための防衛策は?→発注者が容易に発注しやすいシステムを構築する
このように4つの要素を掛け合わせて分析することで、効果的で最適な戦略案を絞り込むことができるのです。
まとめ
SWOT分析は、自社事業にとっての機会や課題などを整理し分析するために有効なフレームワークです。自社事業に影響を及ぼす外部環境は常に変化し、その変化に応じて自社の強みと弱みもまた変化していきます。
目的と目標を明確に定めたうえでSWOT分析を取り入れていくことで、現状および将来に最適化された戦略を導き出すことに役立ちます。この記事でご紹介した方法や具体例などを参考に、SWOT分析をぜひ取り入れてみてください。