STP分析のあとにすぐ4P施策を検討、マーケティング開始!となる場合も多いのですが、せっかくペルソナ設定をしたならば、そのペルソナの行動までをしっかりと整理しておくべきです。
現実の人間と同じように、ペルソナは触れる情報の種類とタイミングによって感情を変化させ、次の行動も変わっていくはずだからです。このペルソナ(顧客)の体験を旅に例え、時系列に可視化したものをカスタマージャーニーマップと呼びます。
もちろんあくまで予測に過ぎませんが、マーケティングの目標も立てやすくなり、企業側の課題も明確になってくるのです。
カスタマージャーニーマップとは?
カスタマージャーニーマップとは、顧客が商品やサービスを認知し、検討し、他社製品と比較して購入、購入後にどのような行動をするのかまでを時系列に可視化した表です。重要なことは【時系列】に【行動を可視化】すること。この2点は、ペルソナ設定を含むターゲティングなどでは整理しにくく、よって情報の共有もしにくいからです。
商品やサービスごとに顧客の購買プロセスは変わるので、お手本となるようなモノがどこかに転がっているわけではありません。自社の商品に価値を見いだしてくれるであろう顧客(ペルソナ)は、購入プロセスのどの段階にあって、どのようなタッチポイント(接点)が必要なのか、カスタマージャーニーマップは都度作り直して、マーケティング施策に反映させなければなりません。
知っておきたいAIDMAとAISAS
マーケティングに関わっていると「AIDMA」や「AISAS」という言葉を聞くことがあると思います。AIDMAは1920年代に米国で提唱されたもので、消費者の購買プロセスを表しています。
- Attention(認知)
- Interest(興味)
- Desire(欲求)
- Motive(動機) → 最近ではMemory(記憶)とする場合もある
- Action(行動)
AISASは1995年に株式会社電通が提唱したもので、インターネット時代に対応した消費者の購買プロセスを表現しています。
※AISASは株式会社電通の登録商標です。
- Attention(認知)
- Interest(興味)
- Search(検索)
- Action(行動)
- Shere(共有)
他にもAIDC(Conviction:確信)Aというモデルなどが唱えられていますが、いずれにせよ顧客は【時系列】に感情を変化させ、商品やサービスの購入に至ることがわかると思います。
カスタマージャーニーマップとリードナーチャリング
ある調査によれば、自社の商品やサービスを認知し、興味を持っているリード顧客(見込み顧客)の75%は、すぐに商品を購入しないということが報告されています(※1)。しかしこのうち80%ほどの顧客は、2年以内に商品の購入に至る、というデータもあるのです(※2)。つまり反応がないからと言ってリード顧客へのフォローを継続していないと、2年以内には他社に顧客をとられる可能性があると言うことです。
(※1)出展:Forrester Research
(※2)出展:Sirius Decision
リード顧客へのフォローを欠かさず、有益な情報を提供することによって顧客を育てることをリードナーチャリングと言います。リードナーチャリングは成約するかしないかという差を生むだけでなく、リードナーチャリングをした場合としない場合では、その後の購入金額に47%もの差が出る、との調査結果もあります。
効果的にリードナーチャリングを行うには、適切なタイミングでのコンテンツ提供、有効なチャネルとタッチポイントの把握が欠かせません。継続して顧客をフォローして行くには、カスタマージャーニーマップが必要なのです。
カスタマージャーニーマップのメリット・デメリット
カスタマージャーニーマップを作るメリットは今までもお話ししましたが、簡単に整理すると以下のようになります。
- 顧客の行動を時系列に明確化できる
- 顧客の行動を予測し、マーケティングを行うことができる
- 他部署とマーケティングする場合に情報共有しやすい
- リードナーチャリングの計画を立てやすい
ではデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか? これはシンプルに2つ。
- マップの作成に時間がかかる(手間がかかる)
- マップ通りに行動してくれないことも多々ある
カスタマージャーニーマップは、作り込もうと思えばいくらでも詳細に作れてしまうので、作成に手間と時間がかかります。またあくまで予測なので、思い通りに行動どうしてくれない場合も多く過信は禁物です。
カスタマージャーニーマップの作り方
では実際にカスタマージャーニーマップを作っていくには、どのような手順で進めていけば良いのでしょうか。決まった形式や手順はないので、あくまで例と考えて下さい。
①企画立案(5W1H)
商品やサービスのマーケティング施策を5W1Hで決めていく。
When:日時、タイミング、頻度、等
Where:場所、場面、チャネル、販路、等
Who:顧客、競合、パートナー、取引先、担当者、等
What:製品、サービス、価値、コンセプト、テーマ、等
Why:目的、理由、原因、ゴール、影響
How:手段、方法、フレームワーク、等
②ペルソナ設定
STP分析を行い、ペルソナ設定を行う。
③フェーズ(ステージ)設定
商品やサービスの特性を考慮し、フェーズ(時系列に並んだステージ)を設定する。
④チャネルとタッチポイントの設定
フェーズごとに有効と思われるチャネルとタッチポイントを決める。
⑤顧客行動(思考、感情)の予測
顧客がどのような感情と思考によって行動をしているのか、予測してマップに記入していく。
⑥課題の洗い出し
各フェーズで顧客に情報が届くか、ライバルに負けていないか、購入に際して決め手が必要ではないのか等々、課題を洗い出して先手を打つ準備をする。
⑦マーケティング施策を当てはめる
できあがったカスタマージャーニーマップに他のマーケティング施策を当てはめて、違和感がないか確認する。
カスタマージャーニーマップの例
事例として調理器具を製造・販売する会社が、無水調理のできる鋳物ホーロー鍋を新たに発売するケースを想定してみました。この会社が【最も理想的な顧客】と考えるペルソナはどのように思考し、行動するのか、カスタマージャーニーマップに記入していきます。
コツはなるべくシンプルにまとめること。必要に応じて項目を追加していきましょう。
まとめ
カスタマージャーニーマップは凝ってしまうとキリがありません。顧客の行動を第三者的にまとめることを心がけ、理想の行動を作ってしまわないように留意しましょう。また、一度作ったマップはそれで更新をやめてしまわずに、PDCAを回してブラッシュアップしていくことが何より重要です。