用語解説【ZMOT】
ZMOT(Zero Moment of Truth)は、Googleが提唱する、ユーザーの購買意思決定に関するメンタルモデル。「ユーザーが商品を購入する意思決定は、来店するより以前に、インターネットでの情報収集によって行われている」とする考え方を指す。
インストアマーケティングモデルであった「FMOT(First Moment of Truth)」に対して、プレストアマーケティングモデルであると言える。
ZMOTとは
インターネットが普及した現代では、何かを買う際、『お店に行ってから商品を選ぶのではなく事前にGoogleやSNSなどで情報収集して買う物を決めておく』という行動が当たり前になりました。
この「消費者が購入するものは、来店するより以前にすでに決定しているケースが多い」という概念を言い表すマーケティング用語が、今回解説する「ZMOT」です。
ZMOTは「Zero Moment of Truth」を略したもので、「消費者が買うことを決める“真実の瞬間(Moment of Truth)”は、来店して実際に商品を見るより以前の段階(Zero)に存在している」ということを意味しています。
ZMOTの読み方は「ズィーモット」です!
ZMOTというメンタルモデルを提唱するようになったのはGoogleです。
2010年にGoogleのオフィシャルブログに「The Zero Moment of Truth」として取り上げられ、翌2011年には「Winning the Zero Moment of Truth」と題したeBookがGoogleにより作成、提供されています。
上記のebookでは、調査結果として、
- Would it surprise you to know that a full 70% of Americans now say they look at product reviews before making a purchase?
- Or that 79% of consumers now say they use a smartphone to help with shopping?
- Or that 83% of moms say they do online research after seeing TV commercials for products that interest them?
上述の内容を日本訳すると…
- アメリカ人の70%が購入前にレビューを見ている
- 消費者の79%が、買い物の際にスマートフォンを活用している
- 母親の83%が、テレビCMで興味を持った商品についてネットで調べている
といった事実が紹介されており、商品購入の意思決定は店頭ではなくインターネットでの行動にあると結論付けられていることが分かります。
ZMOTの前提としてあったFMOT、SMOTという概念
ZMOTの意味は理解できても、それを言い表す名称が「Zero Moment of Truth(真実のゼロモーメント)」であるという点がどうもピンと来ないという方もいらっしゃるかもしれません。
この名称の意味を理解するためには、前提としてある「Moment of Truth」という概念、そしてZMOTの前提としてある「FMOT」「SMOT」という概念を知っている必要があります。
Moment of Truthとは
マーケティング用語としての「Moment of Truth(モーメントオブトゥルース:真実の瞬間)」とは、消費者がブランドや製品、サービスの質について判断し、購買を決定する瞬間のことを言います。
スカンジナビア航空の元CEOヤン・カールソン氏が1990年の著書「真実の瞬間」において提唱したことからマーケティング用語として知られるようになりました。
カールソン氏の考え方とは、「スカンジナビア航空のスタッフが顧客に対応する時間は約15秒であり、その15秒の間に顧客はサービスの質を判断・決定している」というものです。
それまでのマーケティングはマス広告によるプッシュ型マーケティングが主流でしたが、Moment of Truthという考え方が登場したことで、ユーザーの行動に注目するというマーケティング戦略が広まり始めたと言えます。
FMOTとSMOT
2005年には、米国P&G社のCEOであったアラン・ラフリー氏が、顧客が意思決定をする瞬間として、2つのMoment of Truthを提唱しました。「FMOT(First Moment of Truth)」と「SMOT(Second Moment of Truth)」です。
FMOT(First Moment of Truth)
FMOTはFirst Moment of Truthの略で、「第一の真実の瞬間」と訳すことができます。
当時P&G社が実施した調査の結果「顧客は店舗の商品棚を見て、3秒から7秒ほどの間でどの商品を購入するかを決定している」ということがわかったのです。
このわずかな時間がFMOTであるとして、P&G社はパッケージやPOPの改良など、店頭でのプロモーションを重視したマーケティング戦略を展開し、売上を伸ばしました。
SMOT(Second Moment of Truth)
SMOTはSecond Moment of Truthの略で、「第二の真実の瞬間」と訳されます。SMOTは、商品を購入した消費者が、実際に商品を体験するときに訪れると考えられています。
消費者は購入した商品やサービスを実際に体験してみて良し悪しを判断し、そのブランドの商品やサービスを次回も利用するかどうかを決定するという考え方です。
FMOTとSMOTを重視するマーケティング手法は、ユーザー視点のマーケティング戦略の重要性が認識されるとともに、広く浸透していきました。しかしインターネットの普及にともない、以前とは消費者の購買行動にも変化が現れます。
従来、FMOTとして重視されていた店頭での商品との接触の時点では、消費者はすでに購入する商品を心に決めていることが多くなりました。最初に説明したとおり、検索などインターネットで事前に情報収集と意思決定を済ませているためです。
「FMOT(第一の瞬間)」よりも前段階にある真実の瞬間という意味で、「ZMOT(第0の瞬間)」と名づけられたというわけです。
コンテンツマーケティングのためにZMOTの3つのポイントを押さえよう
「消費者の購入意思決定は、主にインターネットを通じた来店前のリサーチによって行われている」というZMOTという概念は、現代においてコンテンツマーケティングの重要性が増している根拠の1つであるといえます。
コンテンツマーケティング施策を展開するうえで押さえておきたい、ZMOTのポイントをご紹介します。
- 消費者は購入前に平均10.4件の情報源から情報を引き出している
- 情報収集のタイミングや情報量は商品のカテゴリーにより異なる
- 消費者が商品によってZMOTで知りたいことは3点
①消費者は購入前に平均10.4件の情報源から情報を引き出している
2011年に消費者5000人を対象に、Googleがショッパー・サイエンス社共同で行った調査によれば、買い物の前に商品について平均で10.4件の情報源を利用していました。
情報源としては、テレビコマーシャルや雑誌の記事、友人や家族による口コミ、ウェブサイトやブログ、オンラインでの評価などがあります。
消費者が購入前に触れる情報は増加傾向にあり、それらの中から注目を集めるためのマーケティング施策が求められるといえるでしょう。
②情報収集のタイミングや情報量は商品のカテゴリーにより異なる
上記の調査では、商品を「自動車」「テクノロジー」「消費財・食料品」の3つに分けて、購買前の情報収集の量やタイミングを比較する調査も行われました。
調査結果では、自動車とテクノロジーでは早い時期に多くの情報を集める人の割合が多いのに対して、消費財・食料品の場合は購入の直前に情報収集する人が多いことがわかりました。
どのような商品を扱っているかによって、最適なコンテンツマーケティング施策が変わってくるというわけです。
③消費者が商品によってZMOTで知りたいことは3点
ZMOTにあたって消費者が商品について調べているのは、以下の3点です。
- お金を節約できるか
- 時間を節約できるか
- 自分の人生をより良くしてくれるか
ZMOTで消費者の意思決定が行われるのは、これらの疑問が解決されたときです。コンテンツマーケティングでは、消費者が商品購入にあたって感じている疑問や不安を解決する答えを提示できるかどうかが重要であるといえるでしょう。
まとめ
スマートフォンが普及した現在では、老若男女さまざまな消費者が購買前にインターネットでの情報収集を行うのが当たり前になっています。消費者の購入行動の変化にともなって、マーケティング施策もマス広告主体の時代から、消費者視点の施策が重視される時代へと変化してきたといえます。
ZMOTは、現代において消費者に注目され選ばれるためのマーケティング戦略を考えるうえで、必ず理解しておく必要がある概念であるといえるでしょう。